―どのようにワークラウンジをデザインしたのですか?
「ワーケーション」をコンセプトに、落ち着いてリラックスできる空間を目指しました。イメージしたのは誰かの家のすてきなリビングや、洗練されたホテルのラウンジのような場所です。
デスクだけでなく、ゆったり過ごせるエリアも設けています。テーブルやラウンジチェアなどの家具は、リビングに置いても違和感のないデザインでありながら、オフィスとしての機能性も兼ね備えたものを選定。レイアウトにもこだわり、隣同士に座っても1mほどの間隔が保てるようにしています。
2025年に竣工した賃貸マンション〈Brillia ist 新御徒町〉には、「サステナビリティ」と「ウェルネス」をテーマにしたワークラウンジが設けられています。「気持ちよく働き、リラックスもできる空間を」という想いから生まれたこの場所。設計を手がけたNew Norm Designのファラ・タライエさんに、空間づくりへのこだわりや、その背景にあるストーリーを伺いました。
リラックスしながら働ける、空間設計と素材選び
「ワーケーション」をコンセプトに、落ち着いてリラックスできる空間を目指しました。イメージしたのは誰かの家のすてきなリビングや、洗練されたホテルのラウンジのような場所です。
デスクだけでなく、ゆったり過ごせるエリアも設けています。テーブルやラウンジチェアなどの家具は、リビングに置いても違和感のないデザインでありながら、オフィスとしての機能性も兼ね備えたものを選定。レイアウトにもこだわり、隣同士に座っても1mほどの間隔が保てるようにしています。
サステナブルな素材には味わいや個性があります。主張しすぎず、温かみがあるのが魅力です。素材の主張が強すぎると、視覚的に疲れてしまったり、落ち着かなかったりしますから。だからこそ、サステナブル素材は住宅に適していると思います。家族と過ごす場所、大切にしたい空間には、温かみのある素材がぴったりです。
ワークラウンジ内には使用した素材を紹介する二次元コード付きのパネルを設置しました。読み取っていただくと、サステナブルなマテリアルに特化したプラットフォーム「Matinno(※1)」に飛び、それぞれの素材が持つストーリーを知ることができます。
パネルを拡大して見る
素材のストーリーについて詳しくはこちら
素材の魅力とストーリーを体感できる場に
第一に、日本の素材をできるだけ使いたいという思いがありました。
第二に、この空間自体を「ショールーム」のようにしたかったんです。「こんな素材があるんだ」と、利用する人にとって学びや気づきのある空間にしたいと思いました。このマンションには1LDKや1DKといった間取りが多く、入居者の多くは若い世代になると思います。そういった世代や時代背景にもフィットする空間を目指しました。
そして第三に、全ての素材にはそれぞれストーリーがあるので、そのストーリーを集めて、アートのような空間をつくりたいと考えました。
例えば、個室ブースには海洋プラスチックデスク(※2)を採用。天板は海洋ごみを回収して板状に加工した素材で、「花畑のような雰囲気にしてください」とオーダーしました。さまざまな色が入っていますが、少し離れると青っぽく見えて、ネモフィラで有名な「ひたち海浜公園」の風景を思わせます。
この素材を選んだのは、海の環境問題を「触れる」ことで身近に感じてほしいと思ったから。また、私たちが選んだ素材には全て「アフターライフ・ストラテジー(循環戦略)」があります。この素材もメーカーに返却すると再資源化される循環型の仕組みになっているんですよ。
特に気に入っているのが壁の塗装です。卵の殻を原料にしたエッグペイント(※3)を使っています。一般的な塗装に比べてニオイがほとんどなく、自然な香りがするんですよ。触れると卵に触れたような、ひんやりとした心地よさがあります。朝と夜では光の加減によって色の見え方が変わるのも魅力で、白っぽく見えたり、クリーム色に見えたりします。この空間にぴったりだと思いました。
また、壁に飾った3点のアート作品は日本の伝統技術を受け継ぐ職人さんたちによるもの。越前和紙などが使われていて、御徒町の雰囲気にもマッチしていると思います。
人の想いが宿る空間が、日常をより豊かに
私がいつも大事にしているのは、「関わる人たちと気持ちを共有すること」。施工会社さんやゼネコンさん、デベロッパーさんとも、「この椅子、どっちがいいですか?」「この素材、どう思います?」と何でも意見を聞いて、少しずつでも関わってもらうようにしています。
そうすることで、空間に“愛情”が宿るんです。関係者がその空間を本当に好きになってくれると、使う人にも自然とそれが伝わります。逆に、関係者の気持ちが入っていないと、どこか冷たかったり、使いにくかったりする印象を与えてしまうものなんです。
東京建物さんもさまざまな制約がある中で、たくさん工夫してくれました。イメージに合うドライフラワーを探しにわざわざお店に足を運んでくれたり。小さなことまで愛情を持って取り組む姿勢が伝わってきて、心から「一緒につくった」と感じられるプロジェクトになりました。
この空間では仕事だけでなく、落ち着いて本を読んだり、外の景色を眺めながらコーヒーを飲んだりできます。そんな“ほっとする時間”があると、気持ちを切り替えてまた仕事に向き合える。この空間がそんなふうに入居者の日常に寄り添う場所になればうれしいです。
働く場であり、くつろぐ場であり、自分らしさを取り戻せる場所――そんなワークラウンジが〈Brillia ist 新御徒町〉に誕生しました。さらにこの建物では、サステナブル素材の活用に加え、太陽光パネルや蓄電池の導入など、環境に配慮した取り組みを実施しています。ここから始まる新しい暮らしの中で、サステナブルなライフスタイルが日常の一部として息づいていくでしょう。
Brillia ist 新御徒町
https://brilliaist.com/i-shinokachimachi/
※1 Matinno :NewNorm Design株式会社
※2 海洋プラスチックデスク :株式会社REMARE
※3 エッグペイント :日本エムテクス株式会社