Time & Styleと考える、家具から広がる豊かなつながり 【後編】

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  • 公開日:2025.08.29

長野市に誕生予定のマンション〈Brillia 長野北石堂 ALPHA RESIDENCIA〉では、モデルルームを彩る家具やアートに、県産木材と地元の職人の技を取り入れています。家具ブランド〈Time & Style〉との協業を通じて、自然環境や地域社会とのつながりをインテリアから見つめ直す試みです。後編では、ものづくりの現場を訪ね、木の香り、機械の音、職人の手仕事に触れながら、空間に宿る“つながり”の源を辿ります。

“地材地工”という
考え方

自然素材や伝統技術を生かしたものづくりを続ける家具ブランド〈Time & Style〉は、北海道・旭川の自社工場で製材から家具の加工までを一貫して行いながら、日本各地の職人とのつながりも大切にしています。

近年は、山で育った木をその土地で加工し、そこで使うという“地材地工”の考え方を軸に、地域ごとに木材の調達から製造までを完結できる体制を整えてきました。「地産地消」に通じるこの考え方は、木にとっても理想的です。土地の気候に適応して育った木は、同じ環境で加工・使用されることで、自然とその場になじみます。

今回のプロジェクトでも、長野県産の木を使い、県内の製材所や木工所の職人とともに家具やアートを形にしていきました。こうして地元の木を使うことで、住む方にも、より一層の愛着が生まれることでしょう。

標高が高く寒冷な長野では、木がゆっくり育つため、年輪が詰まって狂いの少ない良質な木材になる。

地元の職人とともに
−−カクダイ製材所(茅野市)

木を見て、木に聴く

最初に訪れたのは、茅野市にある〈カクダイ製材所〉。ご夫婦で営む小さな製材所です。昭和50年の創業以来、丸太一本一本と向き合い、その木の性質や用途に合わせた製材を行っています。

今回、モデルルームの家具やアートに使用する長野県産の栗の丸太も、ここで製材されました。この日は、住宅用の階段材を挽く様子を見学。丸太の曲がりや節を見極め、木目が最も美しく現れるように挽き方を決めていきます。

57年ものの製材機に、最適な木目が出るよう向きを計算して丸太がセットされている。

製材機の帯鋸(おびのこ)の切れ味は音で判断するそう。栗は硬いため、丸太を4〜5本製材すると切れ味が落ちて交換が必要に。

帯鋸が回転を始めると、あたりは大きな機械音に包まれます。樹齢約60年の栗の丸太が30分ほどで厚さ5cmの板7枚に姿を変えました。言葉を交わさずとも息を合わせ、黙々と作業を進めるご夫婦の姿がとても印象的でした。

切り出された瞬間に現れる断面の木目に注目が集まります。同じ木でも、どこをどのように挽くかによって、まったく異なる表情を見せます。だからこそ、職人の目と勘が生きてくるのです。

必要なサイズより大きめに丸太を挽き、乾燥させてから再び挽いて木材に仕上げる。乾燥前の木は水分を多く含むため、見た目以上に重みがある。

製材機を通した後に現れた木目。自然の造形美を、職人の技が引き出している。

“人の技”が木を活かす

多くの製材所が機械化を進める中、〈カクダイ製材所〉では手仕事を大切に、一本一本、木のクセを読み取りながら加工を行っています。「少し曲がっているから、こう切ろう」「ここを取れば、いちばん木目が映える」。こうした判断の積み重ねは、長年の経験と技術があってこそできることです。

近年では、「その土地の素材を使いたい」という声が建築業界でも増えており、有名建築家から直接指名を受けることもあるのだとか。土地に根ざした素材や技術の価値が、いま改めて見直されています。

製材機を操る〈カクダイ製材所〉のご主人。朴訥な人柄と確かな仕事ぶりで、多くの人に愛されている。

自然の記憶を宿すアート−−山崎屋木工製作所(千曲市)

山の風景を、木で描く

続いて訪ねたのは、千曲市にある〈山崎屋木工製作所〉。ここでは、今回のプロジェクトを象徴するアート作品『Ren Ren』のパーツが製作されています。材料は〈カクダイ製材所〉で製材された栗材です。

『Ren Ren』は多角形の木片を組み合わせて構成される作品で、長野の山並みをモチーフに、雪解けの風景をイメージしてデザインされました。パーツの配置によって形や色の印象が変化し、木々の連なりや雪の残る山肌を思わせます。

デザインを手がけたのは、東京から長野へ移住した〈Time & Style〉の飯島さん。長野の自然や暮らしの文化に触れ、「日々の空間になじむアートとは?」という問いから構想が生まれたといいます。木の温もりを生かしつつ、現代的な佇まいも感じられる、“自然と調和するアート”となりました。

山崎屋木工製作所へ向かう道中の景色。高台から千曲川と善光寺平を見渡し、遠くには北アルプスや北信五岳の雄大な峰々を望む。

明るく開放的な空間に工作機械が並ぶ、山崎屋木工製作所の工房内。ここでは4人の職人が家具づくりを担っている。

木目を活かす設計と仕上げ

この作品の魅力のひとつは、木目の豊かな表情にあります。木目の個性が際立つように、栗材の無垢のパーツと、塗装を施したパーツを組み合わせているのが特徴です。木の繊維の流れが一つひとつ異なり、それが多角形の面で組み合わさることで、視覚的な奥行きを生んでいます。

パーツは高精度の加工機で正確に切り出しますが、すべてを機械任せにしているわけではありません。職人が木の特性を見極め、刃の回転数や切り込みの深さなどを微調整しながら、最適なプログラムを作り上げます。

切り出し後の研磨は手作業。木の輪郭を活かしつつ、刃の跡をサンドペーパーで滑らかに整えて仕上げていきます。手仕事による仕上げは、〈Time & Style〉の自社工場でも取り入れられている手法です。〈Time & Style〉のものづくりの根底にある「素材の力を最大限に引き出す」という姿勢が、ここにも息づいています。

CNCマシニングセンターと呼ばれる工作機械でパーツを切り出している様子。

右が切り出す前の木材、左が切り出し後のパーツ。1つのパーツの切り出しは4分弱で完了する。

素材と向き合いながら色を重ねる

塗装の工程では、木の質感を活かすため、透け感のある仕上がりにこだわっています。53個のパーツすべてにマスキングを施し、コテ刷毛で塗料を塗って一晩乾燥させ、さらに塗り重ねるという、丁寧な二度塗りで仕上げます。

塗料の色と質感は、雪が残る山々の風景をイメージして選んだもの。あえて塗装しない無垢の面を織り交ぜることで、表現の幅が広がり、自然の魅力がより豊かに伝わります。

『Ren Ren』は全5パターンのバリエーションを用意しました。モデルルーム内のアプローチや居室、販売センターなどに設置され、訪れる方々の目を楽しませてくれるでしょう。

1,000色を超える塗料の中から、色合いはもちろん質感にもこだわり、マットな仕上がりの塗料を採用。塗料の粘度に合わせて刷毛も使い分けている。

暮らしに寄り添い、長く親しまれる住まいのかたち

最後に、完成したモデルルームをご紹介します。インテリアコーディネートを手がけたのも〈Time & Style〉。ナチュラルな木調をベースに、ブラックのアクセントを効かせることで、温もりを漂わせながらも洗練と気品を醸し出す空間に仕上がりました。

モデルルーム内には、今回のプロジェクトで生まれたアートや家具がしつらえられ、それらを実際に購入してご自宅でお使いいただくこともできます。木の香りと職人の技が息づく空間を、ぜひ体感してみてください。

なお、〈Brillia 長野北石堂 ALPHA RESIDENCIA〉竣工後は、これらの家具やアートが共有部に設置されます。プロジェクトに込められた想いとともに、日々の暮らしをより豊かに彩りながら、長く住まいに寄り添う存在となることを願っています。

モデルルームのリビング・ダイニング。手仕事の温もりや素材感を大切にしたTime & Styleの家具が並び、居心地のいい空間をつくり出している。

玄関に足を踏み入れると、今回のプロジェクトで誕生した「Ren Ren」が迎えてくれる。プロダクトでありながら、美術作品のような存在感を放ち、住まいに豊かな彩りを添える。

寝室の天井に設置されているのは、前編にも登場した「Bombori」。無垢材の木枠に手漉き和紙を貼り込んだ照明は、伝統的な趣を持ちつつ、モダンな空間にも自然に調和する。

地元の木を使い、その土地で形にし、そこでの暮らしの中へと届けていく。こうした取り組みは、住まいづくりを超えて、自然や地域との関わり方を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。後継者問題や人手不足、技術継承のあり方など、持続・発展させていくには課題も少なくありません。このような状況を踏まえつつ、インテリアを通じて社会と向き合う、その可能性をこれからも広げていきたいと考えています。

  • INFORMATION

    株式会社プレステージジャパンが手がける家具ブランド。1990年にベルリンで創業し、1992年に日本法人を設立。現在、国内6カ所に加え、アムステルダムとミラノにショールームを構える。日本の伝統技術を現代の生活に進化させるというデザインコンセプトのもと、永く使い続けることができ、素材が持つ手触りを大切にしたものづくりを追求している。
    https://www.timeandstyle.com/jp/

本取り組みが導入されている〈Brillia 長野北石堂 ALPHA RESIDENCIA〉の公式サイトはこちら
https://nagano.brillia.com/