昨今、ルーを使わず作る「スパイスカレー」がブームになるなど、スパイスに魅了される人が増えています。料理の"名脇役"について知り、楽しいスパイス生活を始めましょう。
参考:『個性を極めて使いこなす スパイス完全ガイド』稲田俊輔著(西東社刊)
胡椒をはじめ多くのスパイスは種子を採取したものですが、ナツメグは実、シナモンは樹皮、ターメリックは地下茎など、さまざまな植物の部位がスパイスとして利用されています。ハーブとの境界は曖昧で、葉や茎を利用する場合にハーブと定義されて区別されるのが一般的です。
古代において、香辛料は主に薬や香料、保存料などに用いられる貴重品でした。中世ヨーロッパでは「胡椒一粒は金一粒」と言われたほど。貴重なスパイスを求めて始まった大航海時代、コロンブスがアメリカ大陸から持ち帰ったとされる唐辛子は、後の世界の食文化に大きな影響を与えました。
長い歴史の中で、気候風土や食材などに合わせて使い分けられ、世界各地で親しまれているスパイス。同じスパイスでも、使い方で食文化の違いを見ることができます。カレーに使われるスパイスが、ヨーロッパでは焼き菓子やジャムといった甘いものに使われていることも。
スパイス自体に味や旨みはなく、単体では美味しいものではありません。料理にスパイスを加えることで、主食材の香りを際立たせたり、辛みや色を付けたりと、スパイスはあくまで引き立て役。比較的少量で効果があることが多く、使う分量に注意が必要です。臭み消しや防腐作用があるものも。
スパイスは1種類だけを使うと個性が際立ち、複数種類をミックスすると互いのクセを打ち消し合って食べやすくなります。種類を増やしすぎると個々の特徴が弱くなってしまうため、目的に合わせてバランスよく配合することが大切。カレー粉や七味唐辛子もミックススパイスの一種です。
小瓶に入ったパウダースパイスはスーパーなどで手軽に購入できて使い勝手もいいですが、よりフレッシュな香りを楽しむにはホールスパイスがおすすめです。特にカルダモンやクミンなどは、使う直前に挽いてパウダーにするとより香り高くなり、料理の仕上がりが格段に変わります。