口の中の環境は全身の健康に影響を及ぼし、将来のQOLを左右する重要な要素ですが、日本人の予防歯科への意識は十分ではないといいます。今回は、人生100年時代に身につけておきたいオーラルケアの新常識を歯科医師に聞きました。
監修:生澤右子(いくざわ ゆうこ)先生(歯科医師・歯学博士)
日本のオーラルケアに世界との隔たりを感じ、株式会社Dental Defenseを設立。講座やセミナー、商品開発などを通じて世界標準のオーラルケアを発信する。近著に『歯と口を整えるアンチエイジング〜自宅で毎日できるセルフケア!』(ビジネス社刊)がある。
腸内と同じように、口の中にもさまざまな細菌が存在。歯磨きが不十分だったりするとそのバランスが崩れ、むし歯や歯周病につながります。近年では、歯周病が糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの要因となることもわかってきました。適切なオーラルケアで、体の玄関である口腔内の状態が、悪いほうに傾かないようにすることが重要です。
日々の歯磨きだけではプラーク(歯垢)が落としきれなかったり、歯石やステイン(着色)は歯磨きでは落とすことが難しかったりするため、歯科医院でのクリーニングが必須です。クリーニングの頻度の目安は3カ月に1度。定期的に通院することで、むし歯や歯周病などの早期発見にもつながり、ひどくなってしまう前に治療をしてもらうことができます。
ポイント1
きちんと歯磨きをしているつもりでも、磨き残しが多いとむし歯になってしまいます。歯磨きの目的は「プラークを取り除く」こと。プラークは白く、歯と見分けがつきにくいため、染め出し剤でプラークを染めて視認すると効果的に磨くことができます。
染め出し剤は液体や綿棒、タブレットなど、さまざまなタイプがあり、薬局などで購入可能。使いやすいものを選んで。
ポイント2
歯は1本1本違う形をしていて、隣の歯との位置関係も全て異なります。複雑な歯の並びを歯ブラシ1本でなぞるのは難しく、歯ブラシだけでは6割ほどしかプラークを取り除けません。フロスや歯間ブラシを併用することで8割以上になります。
歯と歯の接触具合や、歯ぐきの下がり具合によって使うべき道具が変わるため、選び方や使い方がわからない場合は歯科医院で相談を。
ポイント3
毛束が一つだけでヘッドの小さなタフトブラシは小回りが利き、プラークを効率よく除去できます。普通の歯ブラシでは毛先が届きにくい歯と歯の間や、歯と歯ぐきの境目の清掃に最適。普通の歯ブラシの代わりに使うか、仕上げ磨き用に取り入れたいアイテムです。
毛先がドーム状になっているタイプが、磨き残しやすい歯と歯ぐきの境目のカーブにフィットするのでおすすめ。
ポイント4
むし歯を予防する効果があるフッ素配合の歯磨き粉を使っても、歯磨きの後に口をゆすいだり、すぐに飲食したりすると効き目がありません。泡が立たないジェルタイプの歯磨き粉を使うか、ゆすぐ場合は、おちょこ1杯程度の水にし、歯磨き後2時間は口を休ませましょう。
歯磨き粉選びはフッ素濃度が重要。1,450ppmF(6歳以上の場合)の高濃度のフッ素配合歯磨き粉を使って、フッ素を有効活用。
※年齢に合った濃度のものを選びましょう。
就寝前が最重要!
大事なのは磨いている歯をよく見ること。テレビを見ながらやお風呂に入りながらでは、歯ブラシを的確に当てられないため、せっかくの歯磨きの効果が薄れてしまいます。
染め出し剤を使って、磨くべきところを見える化
フロスや歯間ブラシで歯と歯の間を掃除
タフトブラシに何もつけず、鏡を見ながら1本ずつ磨く
口をゆすいで、染まっているところがないか確認
磨き残しがあれば再度磨いて口をゆすぐ
歯ブラシに高濃度フッ素入り歯磨き粉を2cmほどつけて、歯に塗ったら口をゆすがず、吐き出す
朝食後は普通の歯ブラシと高濃度フッ素入り歯磨き粉で歯磨き。
昼食後や間食後もなるべく歯磨きを。難しければ口をゆすぐだけでも◎。
週に3回程度、舌ブラシを使って舌の汚れ(舌苔)を除去しましょう。