【キッチン探訪】 #3 家事がラクになる仕組みづくり

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  • 公開日:2025.09.24

整理収納コンサルタントとして、著書やSNSで多くの支持を集める本多さおりさん。家族との日常を大切にしながらも、無理なく続けられる暮らしの仕組みを日々考え、提案しています。ご家族と暮らす埼玉県のマンションで、家事も育児もスムーズに回るキッチンとダイニングの仕組みを見せていただきました。

Photographs: Hideki Otsuka

使いやすく、片づけやすい住まいに

キレイを保てる仕組みを追求

本多さんは夫と小学生の息子2人との4人暮らし。キッチンはリビングやダイニングと一体となった壁付けのオープンタイプです。いつも家族や来客の視界に入る場所だからこそ、収納や道具選びにも気を配っているといいます。

とくにシンクや作業台周りはもっとも目につく場所。使ったらすぐにリセットできるよう、片づけやすい仕組みをつくっています。「食洗機のすぐ上と横の棚を開ければ、洗った食器を一気にしまえたりと、その場から一歩も動かずに片づけが完了するようになっています」

物の置き場所を「立地」と考える

「収納の悩みがいちばん多いのは、やっぱりキッチンなんです。物が多くて収まりきらなかったり、逆にしまい込んで不便になったり。最近は収納を“街づくり”や“立地”にたとえてお話ししています」と本多さん。

要は、よく使うものは“駅近”に、たまにしか使わないものは“郊外”に置くのが理想。でも、実際にはそれが逆になっているお宅も多いといいます。「“立地”を見直すだけでも、キッチンは格段に使いやすくなりますよ。新しく収納グッズを買う前に、まずは“収納場所を入れ替えてみる”ことから始めるのがおすすめです」

シンク横に造作した飾り棚に、植物をまとめてディスプレイ。「ふと目に入る緑に癒されます。シンクが近いので水やりもラクなんですよ」

暮らしが整う収納術

TIPS 1
引き出しの空間を最大限に生かす

中身を俯瞰できる引き出しは“優良地”。たとえシンクの下など、しゃがむ必要がある場所でも、意外と使い勝手が良かったり。使用頻度の低いものが場所を取っているなら、戸棚に移しましょう。「カトラリーは寝かせると引き出しの面積を広く使ってしまい、上部の空間が余ってもったいない。そこで、斜めに収納してスペースを有効活用しています」

TIPS 2
一緒に使うものはセット置き

トースターやコーヒーメーカーなど、朝食に使う家電は1カ所にまとめて配置。動線を最短にすることで、慌ただしい朝の準備もスムーズになります。「間取り上、家電も常に視界に入るので、私はまず見た目を重視。気に入ったデザインの中から、比較して選ぶようにしています」

TIPS 3
収納用品は汎用性で選ぶ

汎用性が高い収納用品を選び、必要に応じて買い足すのが◎。ダイニングテーブルの横に2台並べたキャスター付きのワゴンは、細々としたものの収納に活躍。「高さや段の数も変えられて、いろんな場所で使えるので、リビング用にも買い足しました」

TIPS 4
複数設置で「わざわざ」を減らす

ティッシュや時計、鏡など、よく使うものはあちこちに設置。「どこからでも手が届く」「ついでに確認できる」よう配置することで、家の中をわざわざ移動しなくても済むようになっています。「ダイニング周りではティッシュを4カ所に置いていて、どの席からも取れるんです」

PICK UP

もの選びは色と素材を意識して

効率よく家事ができるように物を配置し、なおかつすっきり整ってみせるには、収納の見直しに加えて、もの選びにもひと工夫を。ポイントは色や素材の数を絞ること。本多家では、素材は木やステンレスを、色は黒をベースにし、空間全体に統一感を持たせています。

生活感の出やすい食器用洗剤も、透明ボトル+無色の液体で見た目をすっきり。こうした小さな選択の積み重ねが整った空間をつくります。

「実は私、根っからのめんどくさがりなんです」。だからこそ、片づけやすく、動きやすく、道具も選び抜いて、日々の暮らしがラクになるよう整えてきたと話す本多さん。その工夫は、家族の成長や暮らしの変化に合わせて、常にアップデート中。「暮らしは変わるもの。収納も暮らしに合わせて変えていけばいい」。その柔軟な姿勢が、快適な住まいづくりのヒントになりそうです。

  • PROFILE

    本多さおりさん
    整理収納コンサルタント

    1984年、埼玉県生まれ。結婚後、整理収納コンサルタントの資格を取得し、個人宅向けの整理収納サービスを開始。2021年からはオンラインでの収納相談室も始める。「生活重視、ラク優先」をモットーに、それぞれの暮らしや家にあるものに合わせたオーダーメイドの提案が好評。近著に『あなたを動かす 片付けの切り札』(大和書房刊)ほか、著書多数。
    https://hondasaori.com/