【キッチン探訪】 #2 暮らしの風景をつくる

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  • 公開日:2025.09.16

VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)として、店舗のディスプレイや空間演出を手がける小林夕里子さん。そのセンスとテクニックは、自宅のインテリアにも生かされています。生活感の出やすいキッチンとダイニングを心地よく整えるための工夫とは? 家族3人で暮らす神奈川県のマンションで、お話をお聞きしました。

Photographs: Yuko Kawashima

「飾る」を楽しむ、
心地よい空間づくり

キッチンからの眺めに、日々癒される

住まいを選ぶ決め手となったのは、キッチンからの眺めだったという小林さん。リノベーションでLDKを一体化することで、料理をしながらダイニング越しに外の景色を楽しめる、贅沢な空間が生まれました。「東向きなので、朝食の時間に朝日が差し込んで、一日の始まりを気持ちよく迎えられるんです」

「生活必需品だけでなく、好きなものがあることで暮らしが豊かになる」と語る小林さん。決して物が少ないわけではないのに、雑多に見えないのは、さまざまなアイテムをインテリアになじませる“飾り方”にヒントがあります。

目線を意識して、暮らしに「背景」をつくる

もっとも長く過ごすというダイニングスペースには、飾り棚としても使えるグレーのキャビネットが据えられています。椅子に座ったときに目線の高さになるよう、計算して特注したそう。「視線の先に何があると心地よいか」を考えて飾ること。それが、小林さんが居心地のいい空間づくりで大切にしているポイントです。

季節や気分、新しく出会った雑貨やアートに合わせて、ディスプレイもこまめに入れ替えているのだとか。「衣替えのように飾るものも変えることで、暮らしにちょっとした変化や楽しさが生まれるんです」

オープンキッチンからは、ダイニング越しに外の景色が見渡せる。キッチン背面の淡いブルーの壁は、インテリアに合わせて自身で塗装したもの。

暮らしを彩る
ディスプレイのコツ

TIPS 1:「飾る場所」と「しまう場所」を分ける

視線を集めたい場所と機能性を持たせる場所は、分けて考えるのがポイント。たとえば、キャビネットの上は“飾る専用”と決め、日用品は置かないルールに。細々としたものは扉付きの収納にしまい、空間を「面」で整えるよう意識します。

TIPS 2:グルーピングして、主役をつくる

飾りたいものは色やテーマごとにグループ分けし、それぞれの飾る場所を決めます。「グループごとに主役を決めると、判断の軸ができて飾りやすくなりますよ。夫が選んだ渋めのアイテムも、ほかのものと組み合わせることで調和させています」

TIPS 3:ベースをつくって、まとまりを演出

トレーや本、箱などをベースにして、その上にまとめて飾ることで、複数のアイテムもひとまとまりに見せることができます。飾る前にいったんすべてをどかしてから、バランスを見ながら配置していきましょう。

TIPS 4:生活感の出るパッケージは隠す

日用品や食品のパッケージは、デザインが主張しがち。ラベルを剥がす、容器を移し替える、かごや袋に入れるといったひと手間で、空間の印象がすっきりします。「見せたいものを引き立てるために、見せたくないものは隠す。それがディスプレイの基本です」

PICK UP

道具も、空間を彩るアイテムに

小林さんが愛用しているコーヒーミル「みるっこ」は、鎌倉にあるカフェが扱っている別注色。柔らかな色合いの本体に合わせて、ナラ材の蓋を木工作家にオーダーしたそう。機能性はもちろん、佇まいの美しさや空間との調和も重視。「物を買うときは、“どこに置くか”“何と合わせるか”をいつもセットで考えています」

小林さんのキッチンとダイニングには、「好き」を少しずつ積み重ねながら、日々の暮らしを育てていく楽しさが詰まっていました。
次回は、整理収納コンサルタント・本多さおりさんのキッチンをご紹介します。

  • PROFILE

    小林夕里子さん
    VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)

    大学卒業後、インテリア商社に就職。働きながら専門学校に通い、インテリアコーディネーターの資格を取得。家具店を経て、2007年に株式会社イデー入社。ショップ副店長を経て、VMDとして全国の店舗ディスプレイ監修、スタイリングや講師業も行う。著書に『暮らしを愉しむお片づけ』(すばる舎刊)。