【キッチン探訪】 #1自分仕様に整えた、使い勝手のいいキッチン

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  • 公開日:2025.09.03

イタリア郷土料理をメインとした料理教室を主宰し、書籍やYouTubeなど多方面で活躍する料理家・渡辺康啓さん。素材や道具の選び方に一切の妥協がなく、そのスタイルに共感する人も多いといいます。愛犬ジーノと暮らす都心のマンションを訪ね、渡辺さん流のキッチンの整え方を伺いました。

Photographs: Hideki Otsuka

合理性と美意識を
兼ね備えた空間

どんな空間でも、自分仕様に整える

2024年、東京・四谷にアトリエ兼ショップ「Cibo e Gino」をオープンしたことを機に、自宅もコンパクトなマンションへと引っ越した渡辺さん。以前は人が集まる場でもあった自宅ですが、今は「自分と愛犬ジーノが心地よく過ごす場所」へと役割を変えました。

意外にも、住まい選びではキッチンにあまりこだわらないのだそう。「ガスコンロが3口あればそれで十分。自分の動線に合わせて数センチ単位で物の配置を調整すれば、どんなキッチンでも使いやすくなるので」。自分がどう動いているかを把握することが大切だといいます。

使いやすく、佇まいの良い道具を求めて

居心地のいい空間づくりの秘訣を尋ねると、「好きなものしか持たないこと」とのこと。キッチン周りの家具や道具も、長年かけて少しずつ集めたものばかりです。「お気に入りのものに囲まれていると気分が上がりますし、むやみにものを増やさないので、散らかりにくいんです」

下ごしらえに活躍するステンレスカップや、大判で吸水性に優れたリネンガーゼのキッチンクロスは、いずれも渡辺さん自身が開発したオリジナルアイテム。使いやすさを追求する日々の試行錯誤や気づきが、商品開発の仕事にも生かされています。

対面式のキッチンは、シンクもコンロもピカピカに保たれている。毎晩、コンロを拭いてから寝るのが渡辺さんの日課。「日々の“小掃除”が、キレイを保つ秘訣です」

モノ選びと
配置のルール

TIPS 1:本当に好きなものだけを選ぶ

TIPS 1:本当に好きなものだけを選ぶ

やかんひとつ選ぶにも妥協しません。お気に入りが見つかるまでは、鍋でお湯を沸かしていたほど。「このやかんは中国・昆明の空港で偶然出会ったもの。好きな道具を使うと、それだけで料理の時間が楽しくなります」と渡辺さん。

TIPS 2:揃えることで、すっきり整う

保存容器など、複数必要なアイテムは同じシリーズで統一。「バラバラだと場所を取り、視覚的にも雑多に感じられますが、サイズや形が揃っていれば重ねて収納しやすく、見た目もすっきりします」

TIPS 2:揃えることで、すっきり整う

TIPS 3:よく使うものは、すぐ手に取れる場所に

TIPS 3:よく使うものは、すぐ手に取れる場所に

使用頻度の高い道具は、使う場所の近くに、パッと手に取れるように配置するのが鉄則。「糠漬け用によく野菜の皮を剥くので、ピーラーはレンジフードにマグネットで貼っています。ここが一番便利なんですよ」

TIPS 4:“ちょうどいい”は自分でつくる

既製品で理想のものが見つからなければ、用途を変えて使ったり、手作りしたりすることも。「三角コーナーはアンティークのチーズ用の水切りです。キッチンペーパーホルダーはトートバッグを切って作りました。本来の用途にとらわれず、自分が使いやすい形にすればいいんです」

TIPS 4:“ちょうどいい”は自分でつくる

PICK UP

古いものを暮らしに取り入れる

年齢を重ねるにつれて、古いものの良さがわかるようになり、好きの幅も広がったという渡辺さん。「週末に骨董市に出かけたり、ヨーロッパに行くと蚤の市に足を運んだり。器も国内外で少しずつ集めたお気に入りばかりです」

使いやすさと美しさが無理なく共存する渡辺さんのキッチン。本当に必要なものだけを選び、丁寧に整える。その姿勢は、料理だけでなく、暮らし全体にも表れていました。
次回は、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)の小林夕里子さんのキッチンをご紹介します。

  • PROFILE

    渡辺康啓さん
    料理家

    1980年、鳥取県生まれ。アパレル勤務を経て、2007年に料理家として独立。イタリア料理をベースとした料理教室や企業へのレシピ提供などで活躍。YouTube「せせチャンネル」も人気。著書に『毎日食べる。家で、ひとりで。』(アノニマ・スタジオ刊)など。
    https://www.igrekdoublev.com/