【石のある暮らし】#1 インテリアに石の素材感を

  • [ インテリア ]
  • [ アート ]
  • 公開日:2025.05.16

太古の昔から石は道具や住居、装飾品など、さまざまな形に姿を変え、人々の生活と共にありました。現代においても、自然素材ならではの風合いや存在感により、住空間を豊かにするマテリアルとして人々を魅了しています。

産地の異なる大理石を切り出してカラフルなつみきに仕立てた「積み石」。石そのものの色合いや手触りを楽しめる。

時を超えて愛される大理石を暮らしの道具に

大理石とは海底に堆積した貝殻などからできた石灰岩が、地中の熱と圧力によって再結晶化したもの。加工のしやすさや意匠性の高さから、古代より建築に用いられており、ギリシャのパルテノン神殿やインドのタージ・マハルなどがよく知られています。

現代でも、建物の内装材として不動の人気を誇る石材の一つです。磨くと光沢が出て美しく、上品なマーブル模様と相まって、洗練された佇まいに。大理石でできたプロダクトを生活空間の中に取り入れると、インテリアに上質感を添えてくれます。

トルコ産「ルナベージュ」の柔らかな色味が草花を際立たせる花器(写真上)。スペイン産「ロッソアリカンテ」とイタリア産「ペルリーノロザート」を組み合わせた、ピンクのグラデーションが美しいブックエンド(写真下)。素材感を生かしたシンプルなフォルムは、なにげないオブジェとしても絵になる。

地球の躍動が刻んだ模様をアートとして愛でる

鉱物の集合体である石は、成り立ちの違いにより3種類に大別されます。マグマが冷えて固まった「火成岩」、岩が熱や圧力で再結晶化した「変成岩」、砂・土・貝殻などが堆積した「堆積岩」。含まれている鉱物の種類や割合によってさらに分類され、それぞれ異なるストーリーと表情を持っています。

水の流れや地中で一度砕けた跡など、石の模様はその石が経てきた時間そのもの。同じものが一つとしてなく、地球がつくる芸術品ともいえます。アートとして住まいにしつらえれば、眺めるほどに新しい発見があり、飽きのこないインテリアとして楽しめます。

世界各地から集めた多種多様な石を切り出し、約5.5mmという薄さに加工したアートパネル。裏面に金属フックがセットされているため手軽に壁掛けできる。写真上、左から「ソーダライトブルー(大理石)」「ロイスブルー(石英石)」「ブラックマリナーチェ(大理石)」、写真下「スノースケープ(御影石)」。

端材に命を吹き込み、自由な発想で楽しむ

建築用石材の製作はスラブと呼ばれる大きな石の板から必要なサイズを切り取るため、どうしても端材が出てしまいます。端材は細かく砕かれて砕石や再生土となりますが、そうなると何万年、何億年もの歳月をかけて生まれた色や柄の個性が削ぎ落とされることに。

端材をアップサイクルすることで、本来の素材感を保ったまま貴重な資源を最大限生かすことができます。偶然生まれたさまざまな造形を楽しめるのも端材ならでは。割れた形をそのまま利⽤して自由な楽しみ方ができ、唯一無二のインテリアをつくれます。

端材プレート(写真上)はディスプレイ用の土台として活躍。お気に入りのアクセサリーや腕時計、鍵などを置いたり、お香やキャンドルの受け皿にしたりしても。石のかけらを使ったマグネット(写真下)でインテリアに遊び心を。さまざまな個性を持つ石の中からお気に入りを選ぶのも楽しい。

COLUMN

石材加工の現場を見学

丁場(ちょうば)と呼ばれる採石場で採掘された原石は大きいもので約7㎥。重さは約20tにもなります。ブロック状の原石を調達したら、スライスして挽板(スラブ材)にするため、御影石の原石ならワイヤーと水を使って1個あたり約10時間かけて切断。そこから部品の寸法で切り出し、さまざまな加工を施して製品にします。

模様の美しさを引き出す職人技

木と同じように石も切る方向で「柾目」と「板目」になるものがあり、模様のどこを生かしてどう組み合わせるかでも仕上がりの印象が大きく変わります。工事の基準となる線を引く「墨出し」は重要な工程の一つ。キズやアザを回避しつつ、模様のつながりを計算し、美しさを最大限引き出すには、職人の高い技術が必要とされます。

石は種類や加工の仕方、デザインによって、さまざまなインテリアに調和します。小さなものでも自然素材ならではの存在感があるので、まずは何か一つ、生活空間に取り入れてみてはいかがでしょうか。次回は、石を生かした魅力的な建築をご紹介します。

  • INFORMATION

    関ヶ原石材

    建築用石材の調達から材料加工、現場施工までを行う総合建築石材会社。1951年の創業以来、建築家や大手建築会社に世界各地の石を届け、商業施設やオフィスビルなどの外壁・内装づくりに関わる。また、「石のもつ魅力に日常半径1mで触れる」をコンセプトに、プロダクトブランド「ISHIZO(石三)」を手がける。
    https://www.ishizo.online/ja