【読書に浸る旅へ】#2 人生を豊かにする一冊に出会う

  • [ 旅 ]
  • [ カルチャー ]
  • 公開日:2024.11.27

“本の街”として知られる千代田区神保町。古書店や新刊書店、出版社などが多く集まり、その規模は世界一ともいわれています。本との出会いの場を求めて、神保町の一角に佇む「ブックホテル神保町」を訪ねました。

Photographs: Hideki Otsuka

読書をするために
泊まるホテル

日本国内では年間6万冊以上もの本が出版されており、出会うことのない本がほとんど。「ブックホテル神保町」のコンセプトは「“わたしの本”を見つけるホテル」。本と出会える仕掛けがたくさん用意されており、都心にありながら、都内近郊に住んでいる方の利用が多いといいます。リピーターも数多く、読書のためにチェックアウトを延長する方もいるそうです。

画像提供:ブックホテル神保町

1階のロビーをはじめ館内の至る所に本があり、2,000冊以上の蔵書を自由に閲覧できる。

ホテルに足を踏み入れると、壁一面の本棚に囲まれた空間が広がります。フロントのある1階は「本と、出会う」「音楽のある生活」「日常を脱出する」など複数のテーマを設け、本好きのスタッフたちが選書。読後どんな気持ちになれるか、どんな人におすすめかなど、コメントカードが添えてあります。

フロントのカウンターは19〜22時の間、ブックバー「ing.」になり、毎日1冊ずつスタッフがセレクトした本をお通しのように紹介してくれます。それらの本を介して会話を楽しんだり、お酒を片手に読書をしたりしても。宿泊者以外も利用できるので、仕事帰りにフラッと立ち寄る方も多いのだとか。

人気を集めているのが、事前アンケートの回答をもとにスタッフが選書する「ブックマッチングサービス」。アンケートでは興味のある分野や最近の悩み、目標などを掘り下げ、それらに寄り添う2冊を選書理由を添えてチェックイン時にお渡し。そのほか、誕生日をイメージした文庫本366冊がずらりと並ぶコーナーや、タイトルを隠した本をコーヒーやチョコレートと共に提供する「ブックペアリング」など、ユニークなサービスが偶然の出会いを演出します。

画像提供:ブックホテル神保町

本と宿がつくる
新たな旅

客室には年代・性別問わず楽しめる話題書を中心に、仕事や恋愛、人間関係など、さまざまな悩みにアプローチする本が用意されています。猫に関する本を集めた部屋や、スマートフォンを閉じ込めておくための檻を設置した「デジタルデトックスルーム」などのコンセプトルームも。

最上階にあるプライベートサウナ付き客室「MANGA ART ROOM, JIMBOCHO」は、“漫画の洞窟”をテーマにした、本棚が集積する空間デザインが特徴です。独自にキュレーションされた漫画のほか、期間限定でコラボレートする作品の原画やオリジナルコンテンツなどを展示。サウナでととのい、漫画の世界に没入する特別な宿泊体験が可能です。

漫画の画を構成する白と黒をそれぞれモチーフにした各1室を展開。最大5名で宿泊できる。

画像提供:ブックホテル京都九条

2024年3月には京都に「ブックホテル京都九条」がオープンし、同様に新たな本との出会いや読書のきっかけを提供。「本で遊ぶ」をテーマに掲げ、読書へのハードルを下げるためのさまざまな工夫がされています。

さまざまな世界や時代を疑似体験できる読書は、旅することに似ています。時々インターネットやSNSから離れ、読書という旅に出てみてはいかがでしょうか。

「ブックホテル神保町」のスタッフが選ぶ、旅に出たくなる本。

『世界の美しい本屋さん』清水 玲奈著・エクスナレッジ刊

旅行が好きで旅先で本屋を見つけたら必ず入ります。この本では世界の名書店が紹介されていて、日本にはない発想で運営されていたり、建物自体がすてきな書店が多く、眺めているだけでも楽しいです。一度は訪れてみたいのはパリにある「シェイクスピア・アンド・カンパニー」。気になった書店を目当てに、次の旅先を決めてみるのもおすすめです。