【読書に浸る旅へ】#1 ブックホテルで過ごす贅沢時間

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  • 公開日:2024.11.22

仕事や生き方のヒントが見つかったり、知的好奇心が満たされたり、感性が磨かれたり、人生の糧となる本。慌ただしい日常から離れ、ゆったりとした読書時間を過ごすために、ブックホテルを旅の目的地に訪れてみてはいかがでしょうか。

「箱根本箱」の2層吹き抜けのラウンジスペース。天井まで届く本棚と窓越しに望む箱根の山並みが壮観。

本に囲まれて、暮らすように滞在する

箱根・強羅エリアにある「箱根本箱」では、暮らしに彩りを添える「衣・食・住・遊・休・知」をテーマに、新刊・古書・洋書問わず気軽に読める本を中心に揃えており、館内随所に用意された読書スペースで心ゆくまで読書に浸れます。客室には著名人による選書コーナーが設けられているほか、テラスと温泉露天風呂があり、ハンモックに揺られながら読書したり、読書の合間に温泉でほっと一息ついたり。東海道をテーマにしたローカル・ガストロノミーを楽しめるレストランもあり、思い思いの時間を過ごせます。

「あの人の本箱」は各界の第一線で活躍している著名人が選書したオリジナルの本箱。客室を中心に館内のさまざまな場所に設置されており、どこに誰の本箱が置かれているのかは現地でのお楽しみ。

館内随所に小さな読書空間「おこもりスペース」が設けられている。読書に耽るのはもちろん、思考を整理したり、企画書を書いたりしても。館内に置いてある本は購入して持ち帰ることもできる。

「箱根本箱」のスタッフが選ぶ、旅に出たくなる本。

『旅をする木』星野道夫著・文春文庫

極北の地・アラスカの自然の美しさと、そこで暮らす人々の声や息づかいに対する深い洞察をつづったエッセイ集。写真家である著者の文章は、現代に生きていると見落としてしまいがちな人生の本質的な豊かさや意味をそっと問いかける。旅はその問いに向き合う機会をつくってくれるものだと、この本を開くたびに気づかされます。

文豪ゆかりの温泉宿で、往時に思いを馳せる

避暑地として明治から昭和初期にかけて多くの文化人が集った長野県蓼科。大正15年創業の「蓼科 親湯温泉」では多くの歌人や作家が湯に浸かり、文学談議を繰り広げ、数多くの作品が生まれました。3万冊もの蔵書の中には昭和初期の出版当時の装丁の貴重な本も。当時を偲ばせる知的な空間、クラシカルなバーを備えたラウンジで読書に耽り、渓流沿いの露天風呂に癒やされ、個室レストランで山の幸を堪能。贅沢なひとときを過ごせます。

岩波文庫の創設者は蓼科に程近い諏訪市の出身。出版事業を通して日本文学や哲学に多大な功績を残し続けていることを誇りに思い、その名を冠した「岩波文庫の回廊」を設けている。

「蓼科倶楽部」は蓼科にゆかりのある文人10人をそれぞれイメージした客室。独特の色使いの家具と壁紙がモダンな印象の一室は、陰鬱な作風ながら今もなお多くの読者を魅了している太宰 治を表現。

「蓼科 親湯温泉」のスタッフが選ぶ、旅に出たくなる本。

『斜陽』太宰 治著・新潮文庫

本を片手に作者ゆかりの地を訪れてみるのも一興。波乱の人生を送った文豪・太宰 治の代表作の一つである『斜陽』は、没落貴族の家族の物語を通して人生の哀しみや孤独を描いた小説。太宰が新婚旅行で訪れた当館でこの作品を読むことで、心と体を癒やしつつ、自分自身や人生について深く考えるきっかけになるかもしれません。

「旅」と「ミステリー」専門のブックホテル

ホテルの1階にある書店でその日の一冊を選び、併設されたカフェや上階の客室で本を開くと、もう一つの旅が始まります。書店には「旅」と「ミステリー」に関する本を中心にラインナップ。宿泊者は書店から気になる本を客室に持ち帰って読めるお試しサービスも。カフェにはノルウェーのスペシャルティコーヒー「FUGLEN」の豆を使用したコーヒーや地ビールなどのドリンクのほか、本を読みながら片手で食べられる軽食が用意され、読書が捗ります。

ホテルロゴのネオンサインとガラス越しに見える本棚が目印の「ランプライトブックスホテル名古屋」。24時間営業の書店・カフェ・ホテルの複合施設で、宿泊者はカフェも24時間利用可能。

ゆったりくつろげるソファやブックライトをしつらえ、リラックスして読書できる環境を整えた客室。書斎のようなデスクスペースもあり、棚にはホテルおすすめの本が置かれている。

「ランプライトブックスホテル名古屋」の
スタッフが選ぶ、旅に出たくなる本。

『フーテンのマハ』原田マハ著・集英社文庫

小説家の原田マハさんがグルメとアートを思いのままにつづった旅エッセイ。有名な観光地を目的にするわけでもなく、心の赴くまま“フーテン”に旅をする。文中にちりばめられたグルメとアートに対する情熱からは、旅への高揚感や探究心、好奇心を刺激され、読み進めていくほどに、自由気ままな旅に出かけたくなります。