食事編(2)|食料の備蓄は「ローリングストック」で無理なく続ける

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  • 公開日:2026.04.09

「備蓄が大切なのはわかっているけれど、なかなかできない」。そんな声をこれまで何度も聞いてきました。「何をどれくらい備えればいいかわからない」「買い揃えるのが面倒」「管理が大変そう」。このように感じて、なかなか行動に移せない方は少なくありません。でも実は、特別な備蓄品をわざわざ用意しなくてもいい方法があります。それが「ローリングストック」です。

災害時、食料はすぐに手に入るとは限らない

大規模な災害が起きた際、公的な支援物資はすぐには届かないことが多いです。政府は、最低3日分、できれば1週間分の水と食料の備蓄を勧めています。さらに、首都直下地震などの被害想定では、東京の場合、電気が約6日、水道は約30日、ガスの復旧には約55日かかるとも言われています。「数日で元に戻る」と思い込まないことが大切です。

備蓄量に「これが正解」という基準はありません。普段、お米をあまり食べない人に大量のお米は必要ありません。大事なのは「災害時でも、なるべく普段に近い生活を送るために、何がどれだけ必要か」を考えること。【東京備蓄ナビ】などのツールも活用し、自分の家庭に合った量を把握しましょう。

「防災のための備蓄」をやめ、自然に備える

以前の私は、買い物をその時の気分でしていました。そのため、家の中の在庫にムラがあり、買ったことを忘れて賞味期限や使用期限が切れていることもしばしば。

防災に向き合うようになってからは、防災用と日常用を分けるのをやめました。普段食べている・使っているものを少し多めに購入し、減ったらその都度補充する「ローリングストック」を実践しています。そのため、「備蓄している」という意識がなくても、自然と災害に対応できる状態が保たれています。

ただし、非常時にしか使わないものはローリングストックには向きません。そうしたものは、従来通りの備蓄として別に管理する必要があります。

私の「日常が防災になる」食材ストック

私は日常生活用のストック量を、少し多めに設定しています。たとえばお米は、無洗米を常に20kgストックしています。以前は普通のお米を買っていましたが、災害時に研ぐための水が十分に確保できないかもしれないため、無洗米に変えました。

うどんやそばも、乾麺だけでなく冷凍麺も常に5食分をストック。パスタはスパゲティだけでなく、マカロニやサラダスパなど、飽きないように数種類を揃えています。また、レトルトや缶詰、フリーズドライ食品は「調味料」としても使えるよう豊富に用意。これだけあれば、主食も副食も慌てずに用意できます。

ローリングストックが続かない理由と、その対策

「ローリングストックをやってみたけど続かなかった」という声もよく耳にします。主な理由は3つ。

1つ目は、収納がうまくいかず、何がどこにあるのかわからなくなること。対策はシンプルで、「箱単位で管理する」ことです。備蓄用の箱を決め、その中だけをローリングするようにしましょう。

2つ目は、あれもこれも備えようとして面倒になること。「1週間、健康に過ごすために本当に必要なものは何か」を基準に考え、種類を絞るのがポイントです。これで管理の手間やストレスが減ります。

3つ目は、「備蓄品の存在そのものを忘れてしまう」こと。収納の奥や目につかない場所にしまい込んでいませんか?普段の生活で自然と目に入る場所に置くだけで、「使ったら補充する」流れが習慣化しやすくなります。

EXPERT’S NOTE

買い物の間隔を少し変えてみよう

「備蓄は難しそう」という方には、私がよくおすすめしている方法があります。それは、買い物に行く間隔を少しずつ空けてみること。たとえば、普段2〜3日に一度スーパーに行っているなら、次は4〜5日空けてみてください。

そうすると、普段どおりの献立が組むのが難しくなります。そのとき初めて、真空パックのごはんや乾麺、缶詰など、家にある「ストック食材」を使うことになります。

これがローリングストックへの最初の一歩。日常生活の中で備蓄食材を使う経験を重ねることで、暮らしの一部として無理なく備えが身についていきます。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。