室内対策編(2)|在宅避難を可能にする「災害に強い家」のつくり方

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  • 公開日:2026.04.09

災害が起きたとき、必ずしも避難所に行く必要はありません。家が無事で、安全が確保できていれば、自宅で生活を続ける「在宅避難」という選択肢があります。そのために欠かせないのが、家そのものを災害に強くしておくこと。今回は、在宅避難を支える室内対策についてお伝えします。

住み慣れた自宅で避難生活を過ごすために

耐震性に優れたマンションでは、被害が軽微な場合、基本的に在宅避難が推奨されています。住み慣れた自宅で過ごせることにより、心身へのストレスが少なく、体調を崩しにくいという大きなメリットがあります。また、感染症のリスクやプライバシーが確保しにくい環境を避けやすいのも利点です。

ただし、在宅避難を選ぶためには、安全な室内環境をつくっておくことが大前提となります。加えて、ライフラインが止まった状態でも生活を続けられるよう、必要な備えを整えておくことが欠かせません。

家具の配置を工夫して「安全地帯」をつくる

家の中で「ここなら安全」と言えるスペースをつくっておくことは、在宅避難のための重要なポイントです。私の家では、「揺れたらここに集まる」という場所をあらかじめ決め、家族で共有し、実際に避難の練習もしています。

基本は、生活空間にできるだけ家具を置かないこと。据え付けの収納やクローゼットを有効に活用し、家具を置く場合は、引き出しや扉が飛び出す向きに注意して配置しましょう。

もちろん、こちらの記事でお伝えしたように、家具や家電、身の回りのものが「倒れない・落ちない・飛ばない・移動しない」ようにするための対策も必須です。

灯りは「ひと部屋1灯」「ひとり1灯」を用意

停電時の暗さは、普段電気を消したときの暗さとはまったく異なります。ブラックアウト(大規模停電)が起こると周囲一帯が完全な暗闇になり、視界を失ったことによる不安や恐怖から、体がフリーズしてしまうこともあります。

最近の懐中電灯はLEDが主流で、手元は明るく照らせても、広範囲を照らすのが得意ではありません。そこでおすすめしたいのが、部屋ごとに灯りを用意すること。

さらに、家族一人ひとりが自分専用の灯りを持ちましょう。ヘッドライトやネックライトなど、身につけられるタイプの灯りがあると便利です。在宅避難生活で停電が長引いても、灯りを確保していることが、そのまま行動力につながります。

ものを減らすことも防災になる

高い場所に重いものを置いていませんか? 吊り戸棚にものを詰め込みすぎていませんか?「これは本当に必要なもの?」と見直してみることも、在宅避難の準備の一つです。ものを減らすことで室内の安全性は格段に高まり、安全地帯もつくりやすくなります。

すぐに処分できないものは、“とりあえずボックス”を作ってそこに入れ、一旦保留にしましょう。そのボックスをリビングのテーブルに置き、「今の生活に必要?」「思い出に縛られていない?」と、自分に問いかけてみてください。

思い出の品は写真や動画に残し、“とりあえずボックス”へ。しばらくたっても出さなければ、それは手放しても良いサインです。私自身、引越しのたびに持ち続けてきたダンボール6箱分の思い出の品を、この方法で全て整理しました。

EXPERT’S NOTE

暮らしをシンプルに整えることが防災に

不要なものを減らし、日々の暮らしを整えていくことで、自宅は少しずつ「安全な場所」へと変わっていきます。地震対策を一気にやろうとすると、時間も労力もかかり、つい後回しになりがちです。大切なのは、できる範囲から始めること。机の上を片付ける、床にものを置かない。そんな小さな行動も、立派な地震対策です。まずは今、目に入る場所から。今日できる一歩を踏み出してみてください。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。