室内対策編(1)|飛んでくる!?室内の危険から身を守る方法

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  • 公開日:2026.04.09

大きな地震が起きると、家具や家電は想定外の動きをすることがあります。私自身、阪神・淡路大震災で“飛んできた”テレビに直撃され、顔を骨折した経験があります。あの衝撃は今でも忘れられません。家の中にあるものが一瞬で凶器になる。その危険から身を守るために、今日からできる室内の防災対策をご紹介します。

震度7ではモノが飛ぶ!体験から学んだ危険性

1995年の阪神・淡路大震災。夜勤を終えて自宅のベッドに横になった直後、突き上げるような強烈な揺れに襲われました。その瞬間、14kgもあるテレビが1.2m先から飛んできて顔に直撃。当時はまだ地震対策をしていなかったため、枕元の飾り棚や足元の本棚、ハンガーラックはすべて倒れ、机の上に出していたハサミは床に突き刺さっていました。

ただの生活用品が、地震では一瞬にして命を脅かす存在になります。在宅ワークでノートパソコンなどを出したままにしている方は要注意。まずは「出しっぱなしの物が凶器になる」という意識を持つことが大切です。

私の住まいで効果を発揮した地震対策

地震対策というと大がかりなものを想像しがちですが、最も手軽で効果が高いのが「滑り止めシート」です。私は2018年の大阪府北部地震で震度6強を経験し、身をもってその効果を実感しました。マンション12階の我が家で倒れたのは、調味料の瓶が4本だけ。お隣が“家中ぐちゃぐちゃ”になっていたことを思うと、その差は歴然でした。

私がしていた基本的な対策は次のとおりです。
❶食器棚や本棚などの棚板すべてに滑り止めシートを敷く。
❷物は箱に入れ、箱の底には滑り止めシートを貼る。
❸重いものは下、軽いものは上に置く。

さらに、家具・家電を固定し、倒れてこないように対策していました。単体の対策より、複数を組み合わせる「重ね技」の方が効果的です。

家具の固定は命を守る基本

家具の転倒は命に直結します。実際、地震でけがをする人の3〜5割は、家具の転倒が原因とも言われています。倒れた家具が避難経路を塞いだり、火災の引き金になったりすることも。固定は面倒に思えるかもしれませんが、模様替えや大掃除のタイミングが絶好のチャンスです。

家具の固定方法は、状況に合わせて選びましょう。
●L字金具:家具と壁をネジで固定。最も確実。
●転倒防止板:家具の下に挟み込み、壁側に傾斜させる。
●突っ張り棒:家具と天井の隙間に設置。
●耐震(粘着)マット:家具と床を接着させる。

「壁に穴を開けられない」という場合でも、突っ張り棒と耐震マットの併用など、組み合わせ次第で十分に対策できます。

ガラスの飛散を防ぐ工夫

ガラス類も大きな脅威です。割れた破片は鋭利で、避難の妨げやケガの原因になります。食器棚のガラス扉や窓ガラスには飛散防止フィルムを貼っておきましょう。破片が散りにくくなるほか、強風時の飛来物対策にも有効です。

さらに、カーテンを床より10cmほど長めにしておくと、割れたガラス片の飛び散りを抑えることができます。また、ガラス製の食器や照明を、樹脂製や木製などの「割れにくい素材」に変えるのも一つの方法です。

EXPERT’S NOTE

家の中の当たり前が凶器になる前に

滑り止めシートは、百円ショップなどで手軽に購入できます。工作感覚でできるので、お子さんと一緒でも取り組みやすい対策です。日常生活の中できる小さな工夫ですが、その積み重ねが「命を守る家」につながります。まずは簡単なことからアクションを起こすことが大事。また、難しい作業は無理をせず、業者に頼ることも大切な選択肢です。できることから一つずつ、あなたの暮らしに合うペースで対策を始めてみてください。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。