アイテム編(2)|持ち歩く安心、「防災ポーチ」をつくろう

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  • 公開日:2026.04.09

私は普段から、どこへ行くにも必ずバッグに入れているものがあります。それが「防災ポーチ」です。外出先で災害に遭った際、一晩を安全に過ごせるように備えたものです。実際にさまざまな被災現場で感じてきたのは、自分を守るのは案外、大きな装備よりも小さな備えだということでした。今回は、その中身と選び方のポイントをご紹介します。

防災ポーチが助けてくれた体験

ある真冬の日、乗っていた特急列車が人身事故で立ち往生し、そのまま一晩“列車ホテル”になったことがありました。冷え込む車内で不安を抱える人も多い中、私は防災ポーチに入れていた断熱アルミシートで体を保温し、お気に入りのアロマオイルで気持ちを落ち着けることができました。

あのとき、「小さなポーチに入れていたわずかな備えが、こんなに心強いものになるんだ」と実感し、「持ち歩く備え」の大切さを改めて感じました。防災リュックと比べると、まだ馴染みが薄いかもしれませんが、災害が頻発する昨今、自分の身を守るための道具として防災ポーチを携行するよう、防災の専門家らが呼び掛けています。

ポーチ選びと、その中に入れるアイテム

防災ポーチは、「無理なく持ち歩ける」ことが大前提です。大きすぎたり、重すぎたりすると、結局持ち歩かなくなってしまいます。中身が濡れないよう、撥水・防水加工が施されたタイプがおすすめです。また、すぐ取り出したいアイテムはカラビナにまとめて外側へ付けておくと、必要なときに迷わず取り出せます。

入れるものは「命に関わるもの」「衛生を保つもの」「心を支えるもの」の三つに分けて考えると、選びやすくなります。どれも「これがあれば一晩乗り切れる」という基準で選ぶのがポイントです。まずは普段の生活を振り返り、「自分にはこれが必要」というものをリストアップしてみてください。

必ず入れておきたい「防災笛」の正しい選び方

防災笛のように、災害後では手に入りにくいアイテムは、優先してポーチに入れておきましょう。防災笛を選ぶ際の注意点は、一般的なホイッスルではなく、防災用として設計されたものを選ぶことです。

中に玉が入った一般的なホイッスルは、吹いた息が漏れやすく、体力が落ちている時には大きな音を出しにくいのです。交通誘導などに使われることが多く、助けを求める音として認知されにくいという弱点もあります。

一方、防災笛は、体力が低下していても瓦礫に阻まれていても、遠くまで届きやすい音が出せるよう設計されています。中には連絡先を書いた紙を収納できるタイプもあり、救助に特化した仕様になっています。

私の防災ポーチの中身

ここでは、私が普段持ち歩いているアイテムをご紹介します。あくまで一例ですが、「自分には何が必要か」を考えるヒントにしてみてください。

●防災ポーチ:常備薬・エピペン・お薬手帳・マスク・ウェットティッシュ・絆創膏・生理用品・おりものシート・コンタクトレンズ・断熱アルミシート・ポリ袋・小銭・穴を開けたペットボトルのふた(簡易シャワー用)・アロマオイル・マヌカハニーの飴
●カラビナ装着:防災笛・ソーラーライト・万能ナイフ・コンパス
●スマホ関連ポーチ:モバイルバッテリー・充電ケーブル・充電器
●トイレ関連ポーチ:ペットシーツ・ゴミ袋・ティッシュ

EXPERT’S NOTE

自分の生活に合わせてカスタマイズ

私の防災ポーチには「エピペン」が入っています。私にとっては絶対に欠かせない「命に関わるもの」だからです。必需品は人それぞれ違うので、自分の体質や暮らし方、よく行く場所、季節などに合わせて柔軟に入れ替え、あなたの今の生活にフィットしたポーチに育てていってください。小さなポーチひとつからでも防災は始められます。まずは今日の外出に、ほんの少し“安心”を加えてみませんか?

※エピペン……医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療薬。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。