ペット編|ペットと避難するということ。知っておきたい現実と備え

  • 公開日:2026.09.30

東日本大震災や熊本地震では、多くの飼い主がペットとともに避難しました。しかし、鳴き声などへの苦情から、やむなく避難所を離れるケースも。自宅に戻る人、車中泊を選ぶ人、ペットを自宅に戻して世話に通う人など、その対応はさまざまでした。「家族だから一緒にいたい」という気持ちと、共同生活の現実。その狭間で多くの飼い主が悩みました。こうした葛藤を繰り返さないためにも、今日からできる備えがあります。

ペットは「同行避難」が基本に

東日本大震災で多くのペットが飼い主とはぐれてしまったことを受け、環境省はガイドラインを整備し、「同行避難」を原則としました。同行避難とは、避難場所までペットと一緒に避難することです。避難所で常に同じ空間で生活できるという意味ではありません。多くの場合、人とペットは別々のスペースで過ごすことになります。

避難所には動物が苦手な人やアレルギーを持つ人もいるため、排泄の管理や抜け毛対策、鳴き声への対応など、衛生面とマナーの徹底が欠かせません。世話やフードの確保も、原則として飼い主の責任です。そのため、日頃からのしつけと健康管理、十分な備蓄が求められます。そして何より、災害時に自分が責任を持って守れる飼育頭数を考えることが大切です。

ガイドラインが示す同行避難のポイント

環境省のガイドラインには、避難時の対応も紹介されています。

●犬の場合
・リードを付け、首輪が緩んでいないかを確認する
・小型犬はリードを付けた上でキャリーバッグやケージに入れる

●猫の場合
・キャリーバッグやケージに入れる
・扉が開かないようにガムテープなどで固定する

加えて、はぐれてしまった場合に備え、マイクロチップの装着と連絡先の登録、迷子札の着用も必要です。やむを得ず自宅に残してきた場合は、自治体の動物担当部署に相談しましょう。

飼い主がしておきたい日常の備え

被災地では、突然の環境変化によるストレスで体調を崩すペットを多く見てきました。下痢や嘔吐、食欲不振、水を飲まなくなるといった症状が出ることも珍しくありません。

突然起こる災害そのものに慣れることはできませんが、普段の生活の中で環境の変化に対応できる力を育てておくことは可能です。たとえば、キャリーやケージに慣れさせる、飼い主と離れても落ち着いて過ごせるようにする、普段と違う場所でも排泄できるようにするなど。

また、水やフード、トイレ用品などの備蓄も欠かせません。さまざまなフードを食べられるように慣らしておくことや、水も浄水器の水だけでなく水道水に慣れさせておくことも大切です。

わが家の防災習慣を紹介

私の家には3匹の保護猫がいます。仕事で家を空けることが多いため、1泊2日程度なら、ペットシッターや見守りカメラを活用し、猫たちだけで留守番させています。

飲み水は水飲み器のほかに、浴室に水を入れた洗面器を用意。どちらからでも飲めるようにしています。トイレも複数箇所に設置し、どの場所でも自由に使える環境を整えました。

さらに、月に一度は「防災訓練」を実施。複数メーカーのフードを用意し、袋から直接食べる練習もしています。

EXPERT’S NOTE

地域で守るという選択

私の住む地域では同行避難が難しいため、有志でグループをつくり、廃園した幼稚園を「ペット避難所」として利用できるようにしました。

今では28人の仲間が集まり、月に一度ドッグランとして活用したり、犬や猫など種類ごとに部屋を分けて交流会を開いたりしています。さらに、月会費を集めて備蓄品も整えています。

一人でできることには限界があるからこそ、地域で連携して「共助」の仕組みをつくっておくことが大切です。まずは自治体や自治会に相談してみるなど、できることから始めていきましょう。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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