子ども編|親子で取り組む「わが家の防災大作戦」

  • 公開日:2026.09.30

小さな子どもを連れての避難は、大人だけで行動するのとはまったく異なります。移動には時間がかかり、とっさの判断も難しくなります。また、不安を感じた子どもが思うように動けなくなってしまうことも少なくありません。だからこそ必要なのは、「その場で考える防災」ではなく、「事前に決めておく防災」です。今回は、子どもと一緒に避難するために、家族で共有しておきたい考え方と具体的な準備についてお伝えします。

STEP 1:わが家専用の防災マップをつくる

まずは、自治体が公開しているハザードマップを家族みんなで見てみましょう。地震や水害、土砂災害など、どんなリスクがあるのかを知ることが第一歩です。あわせて、避難所や備蓄拠点、医療機関などの場所も確認します。災害対応は自治体ごとに大きく違う場合があるため、自分たちが住んでいる地域の情報を把握しておくことが重要です。

そのうえで、「わが家専用」の防災マップをつくりましょう。通園・通学・通勤ルートの危険箇所や、浸水しやすい場所、避難先までの距離・所要時間などを書き込んでいってください。公衆電話や災害用自動販売機の場所や使い方も共有しておくと、離れているときに被災した場合も役立ちます。

小学生くらいのお子さんがいる場合は、作成を任せてみるのもおすすめです。大人が見落としており、子どもの視点だからこそ気づけるポイントもあります。

STEP 2:防災リュックを整える

避難時の持ち出し袋は、目的別に分けて考えると準備しやすくなります。家族がはぐれてしまうことも想定し、「1人1個」用意するのが基本です。

●第1次防災リュック:災害直後に持ち出す最小限の荷物。「持てる」「使える」「命を守れる」を基準にそろえる。
●第2次防災リュック:避難後、状況が落ち着いてから自宅などに取りに戻る荷物。備蓄品の延長として管理する。

子ども用のリュックには、名前と連絡先を書いたカードや防災笛、水、お菓子などを入れておくと安心です。また、一晩過ごすために最低限必要なものを「防災ポーチ」としてまとめ、普段から持ち歩くことをおすすめします。

STEP 3:家族それぞれの役割を決める

災害が起きたときに、「家族の誰が、何をするのか」を前もって具体的に決めておきます。防災は大人だけのものではありません。子どもにも「自分の役割」を受け持ってもらいましょう。

たとえば「揺れたらテーブルの下に入る」「避難するときはこのリュックを背負う」「保育園にいるときは先生の言うことを聞く」など、事前に約束を決めておくと、子ども自身の安全にもつながります。

また、スケッチブックやノートに書き出しながら話し合うと、子どもにもわかりやすくなります。家族構成や住環境などによっても正解は異なるため、「わが家の場合はどうするか」という観点で考えることが大切です。

STEP 4:行動をシミュレーションする

地震が起きたら、すぐに安全な姿勢をとります。幼児がいる場合は、包み込むように抱きかかえて、頭を守るように体を丸めて「ダンゴムシのポーズ」をとってください。実際にやってみることで、いざというときに素早く動けるようになります。

揺れが収まったら、❶足元を守る、❷家族の安否を確認する、❸情報を集める、❹在宅避難か外へ避難するかを判断する、という流れで行動します。一度シミュレーションしてみましょう。

また、親が落ち着いていると、子どもも安心します。そのための「おまじない」をあらかじめ決めておくと良いでしょう。たとえば、深呼吸をする、胸に手を当てて「大丈夫」と言う、子どもとハグをするなど、心を整える小さな行動が冷静な判断を支えてくれます。

STEP 5:防災トライアルを行う

どれだけ知識があっても、実際にやってみると想定外のことがたくさん出てくるものです。1日だけでもいいので、実際に防災リュックを背負って避難ルートを歩いてみましょう。実際に子どもと一緒に歩いてみると、地図を見ているだけでは気づけなかった危険や問題点が見えてくることもあります。

「2km歩くのが思ったより大変だった」「荷物が重くて途中で疲れてしまった」といった体験は、次の備えに生かせます。途中でやめてしまっても構いません。大切なのは、「なぜうまくいかなかったのか」を家族で振り返ること。こうした経験が、いざというときの力になります。

EXPERT’S NOTE

助けてくれる人を身近につくっておこう

妊娠中の方や産後間もない方、乳幼児がいる家庭は、災害時に周りの助けが必要になることがあります。しかし、周囲がその存在を知らなければ、助けたくても手を差し伸べることはできません。

日頃から挨拶を交わし、地域の防災訓練やイベントに参加して、顔見知りを増やしておきましょう。また、子どもには「困ったときはこの人に助けを求める」という頼りになる存在を伝えておくと安心です。お互いの名前を呼び合える関係を築いておくことが、命を守る大きな助けとなります。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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