共助編(2)|被災時に誰がどう動く?マンション防災の心構え

  • 公開日:2026.09.30

大きな地震が起きたとき、「管理会社が対応してくれるはず」と思っていませんか?災害時には管理会社や管理員自身も被災者となることがあります。マンションで本当に頼りになるのは、そこに住む私たち自身。いざというときに対応できるようにするために何が必要なのか、マンション防災の現実について考えてみましょう。

どんな場面で住民自身が動く必要があるのか

マンションが被災したとき、管理会社だけですべてに対応できるとは限りません。交通機関が止まれば、管理員が出勤できないこともあります。つまり、住民自身で何とかしなければならない場面があるということです。

地震発生後には、さまざまなトラブルが想定されます。たとえば、❶ドア枠の変形による閉じ込め、❷停電によるエレベーターやオートロックの停止、❸照明が点かない、❹上下水道・ガス・電気などライフラインの断絶、❺建物の接合部の破損による立ち入り制限、❻建物自体の損壊、❼管理員がすぐに来られない、など。

こうした状況の中で「誰が対応するか」が曖昧なままだと、混乱が大きくなってしまいます。

私のマンションで実際に起きたこと

以前住んでいたマンションで私が理事長を務めていたときのこと。朝6時半頃、震度5の地震が発生し、大きく長い揺れに襲われました。幸い建物に大きな損壊はなかったものの、ライフラインは停止。通勤・通学の時間帯にエレベーターも止まり、大騒ぎになりました。

私はすぐに各階の班長と理事会役員に連絡をとり、約1時間で全住民の無事を確認することができました。火事や漏水などの二次被害もなく、ひと安心していたところ、多くの住民からゴミ出しについての要望が寄せられました。

その日は可燃ゴミの日で、高齢者が多く住んでいたため、「非常階段の上り下りが難しいが、ゴミは出したい」という声が集まったのです。ここで活躍したのが子ども会。元気な子どもたちに各階の担当をお願いし、親御さんと一緒にゴミ出しを手伝ってもらいました。

なぜここまでスムーズに動けたのか

迅速に対応できた理由は、災害当日だけではなく、事前の準備にありました。私が理事長になった際、まず行ったのは「マンションで起こり得ること」の整理。そして、「管理会社ができること」と「住民が対応する必要があること」を明確に区分しました。

その上で、理事会で繰り返しどう対応するかを話し合い、臨時総会も開いて住民の理解を少しずつ深めていきました。さらに、各階の班長には担当階の住戸状況や家族編成、支援が必要な住民を把握してもらい、それらの情報を理事会で共有していました。

こうした地道な準備と日頃のコミュニケーションを重ねておいたことが、災害時の迅速な安否確認とその後の対応につながったのです。

災害時マニュアルを検討して見えた課題

各自治体はマンション向けに「震災時活動マニュアル策定の手引き」などの資料を公開しています。そこでは、マンション内に「対策本部」「情報班」「救護班」「安全班」「物資班」などの体制を整え、役割を明確にすることの重要性が示されています。

先日、私のマンションでも検討会を行いましたが、多くの課題が出てきました。中でも悩んだのが「管理組合への連絡方法」です。たとえば、家具が倒れて部屋から出られない場合、スマホが手元にあっても、どうやって助けを呼べばよいのかなど。

こうした具体的な課題を、一人一人が考え、住民と管理会社と一緒に話し合っていくこと。それ自体が「共助」といえます。メンバーが変われば新たな問題や解決策が見えてきますし、同じメンバーでも話し合いを重ねるうちに答えが変わることもあります。だからこそ、続けていくことが大切なのです。

EXPERT’S NOTE

被災時をゲームで疑似体験

地震発生直後にマンションで何が起きるのか。それを疑似体験できるのが「Brillia防災ゲーム」です。1グループ3〜4人で順番に「理事長」役となり、カードに記載された状況や住民からの要望に対して、話し合いながら対応を決めていきます。

先日、このゲームの体験イベントを見学しました。そこで耳にしたのは「これは管理員さんにお願いできないのかな」という声。ゲームを通して、大規模災害時には管理員がマンションにたどり着けない場合があり、自分たちで対処しなければならないことに気づいた参加者もいました。

シミュレーションを通じて、「何が足りないか」「どんな備えが必要か」に気づくことができます。ぜひゲーム感覚で防災に取り組んでみてください。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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