共助編(1)|「ええ感じの人」になることが最大の防災に

  • 公開日:2026.09.07

防災用品などの「モノをそろえること」ももちろん大切ですが、実際に災害の現場を経験してきた私が強く感じているのは、生死を分けるのは「人とのつながり」だということです。今回は、私が講演などで必ずお伝えしている「ええ感じの人になる」という、誰でも今日から始められる最大の防災術についてお話しします。

「自助」だけでは限界がある

近年、防災への意識が高まり、「自助」として備蓄に取り組む方が増えています。一方で、「そこまでしなくてもいい」「いざとなれば何とかなる」と考える方がいるのも事実です。また、備蓄をしている方の中には、「備えていない人のために自分の備蓄を分けたくない」「自分はしっかり備えているから共助は必要ない」と思う方が増えている、という話を耳にすることもあります。

しかし、たとえ一週間分の備蓄があったとしても、ライフラインの復旧に数カ月かかることもあります。どれだけ備蓄していても、水害や地震で家ごと失われてしまうことも。個人でできることには限界があり、いざというときに頼れるのは身近な人なのです。普段の生活に少しでも早く戻るためにも、周囲との協力=共助が欠かせません。

「共助」の土台は日常の関係づくり

講演会などで、私が最後に必ずお伝えしているのは「共助のためのきっかけづくり」の大切さです。そのために「ええ感じの人になる」ことが重要だと考えています。決して難しいことではありません。普段から近隣の人に会釈したり、気持ちよく挨拶する。それだけで相手の中であなたは「ええ感じの人」として認識されます。

顔見知りが増えると、自然とコミュニティが広がっていきます。「あの、ええ感じの人ね」と覚えてもらえるだけで、自分や家族が助けてもらえる可能性が高まります。逆に、周囲の人にあなたや家族の存在を自然に知ってもらう機会を逃してしまうのは、とてももったいないことです。

顔の見える関係が安否確認をスムーズに

災害発生直後、マンションでは安否確認がとても重要です。それがスムーズに行えるかどうかが、その後の状況に大きく影響を及ぼします。そして、安否確認のしやすさも、日頃の関係づくりにかかっています。

私が以前住んでいた約500世帯のマンションでは、各階に班長と副班長を置き、両端の部屋から順に直接顔を合わせて安否確認を行うルールを決めていました。実際に地震が起きた際、この方法によって安否確認は円滑に進みました。

こうした仕組みが機能した背景には、日頃から顔の見える関係が築かれていたことがあります。各階の住民同士がお互いを知り、班長や副班長とも気軽に話せる環境があったことで、対応がスムーズに進みました。ここでもやはり「ええ感じの人」であることが大切なのです。

EXPERT’S NOTE

挨拶が最大の防災になる

「いちばん手軽にできる防災は何ですか?」とよく聞かれます。私がいつも答えるのは「ええ感じの人になること」です。そのためには「挨拶」が大切です。マンションの廊下やエントランスですれ違うとき、笑顔で挨拶をする人には自然と好感を持ちますよね。

最近は声をかけられるのを待っている人が増えているように感じます。自分から声をかけてみると、そこから自然に会話が生まれることも多いものです。ぜひ待つ側ではなく、自分から声をかける側になってください。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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