水害編(1)|水害は予測できる災害。知識が判断力を育てる

  • 公開日:2026.09.07

地震は突然起こりますが、水害は危険が迫っているサインを事前に知ることができる災害です。それにもかかわらず、毎年のように「想定外だった」「こんなに長引くとは思わなかった」という声を耳にします。水害の特徴を正しく理解し、「どの情報を見て、いつ行動するか」を整理しておきましょう。

水害は「その瞬間」だけで終わらない

水害には大雨や台風、河川の氾濫だけでなく、土砂崩れ、高潮、豪雪など、さまざまなタイプがあります。特徴的なのは、危険が一気に高まるだけでなく、雨や風が収まった後にも被害が広がる点です。

たとえば、雨が弱まっても川の水位が上がり続けたり、排水が追いつかず街が冠水したり、地盤が緩んで時間が経ってから土砂災害が発生することも。被災範囲が広がりやすく、長期化するケースも少なくありません。ライフラインや物流が止まったり、避難生活が長引いたりすることも想定しておく必要があります。

浸水後の二次被害にも注意

浸水すると、家の中に汚泥水が入り込むことがあります。汚泥水には、上水と下水が混ざっているほか、家屋の倒壊による瓦礫やハウスダスト、虫、カビなども含まれています。さらに、病原菌やウイルスも含まれるため、感染症の原因になりますし、傷口があれば破傷風のリスクも高まります。

また、湿った室内は乾きにくく、カビや細菌も繁殖しやすい環境になります。その結果、呼吸器の不調や皮膚トラブルを引き起こすことも。

水害は浸水そのものだけでなく、その後の片付けや衛生管理まで含めて、長期間にわたる対応が必要になることを覚えておいてください。

川が近くになくても油断禁物

水害というと河川の氾濫をイメージしがちですが、川が近くになくても浸水は起こります。河川が堤防を越えたり、堤防が決壊して起こるのが「外水氾濫」です。

一方、近年増えているのが「内水氾濫」。大量の雨水が川や下水道に流れきれず、街中に水があふれる現象です。ゲリラ豪雨でマンホールから水が噴き出したり、道路が短時間で川のようになったりする映像を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

東京や大阪のように地下開発が進んだ都市部では、外水氾濫だけでなく、内水氾濫による浸水や冠水、地下空間の水没も深刻な問題となっています。

避難判断の目安は「警戒レベル」

水害は予測できる災害でもあります。雨量予測、河川水位情報、気象警報、自治体の避難情報など、事前に多くの情報が得られるからこそ、「情報をどう読み、いつ避難するか」の判断が重要になります。

避難の目安となるのが市区町村から出される「警戒レベル」です。警戒レベルは、災害の危険度と取るべき行動を数字で示したもの。数字が大きくなるほど、危険な状況です。

注意したいのは、「レベル5になったら逃げればいい」と考えると危険だということ。レベル5は、すでに災害が発生している段階で出されるものです。安全に避難するためには、高齢者など避難に時間がかかる方はレベル3で、レベル4では全員が危険な場所から離れる必要があります。「各レベルでとるべき行動」を正しく理解しておくことが大切です。

「防災気象情報」が刷新、わかりやすく進化

近年、気象庁が発表する「防災気象情報」は、より直感的に理解できる形へと見直しが進められています。2026年5月下旬頃からは、新たな運用が開始される予定です。

これまで、河川の氾濫や大雨、土砂災害、高潮などに関する情報は、それぞれ発表する機関や名称が異なり、警戒レベルとの対応が分かりにくい面がありました。今回の見直しにより、「レベル4氾濫危険警報」のように、5段階の警戒レベルと対応した名称へと整理され、危険度と取るべき行動が分かりやすく結びつけて示されるようになります。

さらに、時間の経過に沿って危険度の変化を示す「時系列情報」なども加わり、「いつ行動すべきか」を判断しやすくなります。情報の見方をしっかり理解し、早めの避難行動につなげることが大切です。

EXPERT’S NOTE

天気予報を“防災の目”で見る習慣を持とう

最近はアプリなどでもかなり詳しい気象情報を容易に確認できるようになりました。日頃から天気予報を防災目線で見る習慣をつけておくと、いざという時の行動が早くなります。

ポイントは「今日・明日の天気」で終わらせず、1時間後、3時間後、6時間後といった先の変化までチェックすること。雨は強まるのか、長引くのか、風はどう変化するのか、そうした点を意識して見てみましょう。

情報を得たら、「いつ、どう行動するか」まで考えておくことが大切です。特に子どもや高齢者がいる家庭では、早めの判断が鉄則。雨が強くなってから動こうとすると、移動そのものが危険に。「動けるうちに動く」ことが、水害から命を守る行動になります。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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