避難編(2)|外出先で地震が起きたらどうする?

  • 公開日:2026.08.18

災害は自宅にいるときに起こるとは限りません。通勤途中や仕事中、買い物中など、外出先で地震に遭遇することも十分ありえます。そのときに大切なのは「とにかく帰る」ことではなく、「まず身を守り、むやみに動かない」こと。今回は、外出中に命を守るためにとるべき行動を、時間の流れに沿って整理します。

被災したとき、人はとっさに動けない

2021年10月7日、関東で最大震度5強の地震が発生しました。緊急事態宣言の解除直後ということもあり、多くの人が外出中に被災。電車は運休し、駅は人であふれ、停電や断水が発生した地域もありました。

このとき、「命を守る行動」をとれた人はごく一部でした。多くの人がその場に立ち尽くし、スマホを眺めるだけで動けなかったのが実情です。

災害時に冷静に行動することは、想像以上に難しいものです。だからこそ、事前にとるべき行動を決めておく必要があります。その場で考えて対応するのは、ほぼ不可能だと思ってください。

駅のホームや電車内で揺れたら

駅のホームで地震に遭遇した場合、可能であれば電車の中に入ってください。ホームは上から物が落ちてきたり、混雑で将棋倒しになる危険があります。それに比べ、電車内は構造上、安全性が高いことが多いです。

車内に人が少なければ、両手で首の後ろ(延髄)をしっかり守り、体をできるだけ小さく丸める「ダンゴムシのポーズ」をとりましょう。人が多い場合は、つり革や手すりをしっかり握り、姿勢を低く保って体が投げ出されないようにします。

電車の中に入れない場合でも、同じように「ダンゴムシのポーズ」で身を守りましょう。鞄があれば、頭や首を守るのに使います。自己判断で線路に降りたりするのは非常に危険ですので、必ず駅員や車掌の指示に従うようにしてください。

揺れがおさまった後の判断基準

揺れがおさまったら、次に直面するのが「帰るか、留まるか」という選択です。私自身は、次のような基準を決めています。

➊水や軽食を確保する。
➋モバイルバッテリーの残量を確認し、足りなければ購入。
➌自宅まで5km圏内なら徒歩で帰り、それ以上なら無理に歩かない。
➍タクシー待ちが10人以上なら、駅から離れた幹線道路に移動。
➎タクシーがつかまらなければ、近くの宿泊施設を探す。

こうした基準や数値は人それぞれで構いません。大切なのは「自分なりの判断基準」をあらかじめつくっておくことです。

「むやみに帰らない」ことも命を守る選択

首都圏で平日の昼間に大地震が起きた場合、約650万人が帰宅困難者になると想定されています。一般的に、徒歩で安全に帰れる距離は10km未満です。慣れない靴や暗い道、倒壊した建物、火災、混雑……。こうした状況で無理に移動することは、二次災害につながります。

「何がなんでも家に帰る」と決めてしまうことが、かえって命を危険にさらすこともあります。十分な情報がないうちは動かないこと。まずは職場や学校、駅、指定された一時滞在施設など、今いる場所の近くで安全を確保してください。それがもっとも現実的で安全な選択となる場合が多いのです。

EXPERT’S NOTE

外出先で習慣にしたいこと

私は外出時には常に非常口や非常階段、防火扉などの位置を確認し、避難ルートを考えるようにしています。ぜひ外出中に自分で安全だと思える場所を探す習慣を身につけてください。

また、「誰かが動いたからついていく」のではなく、「自分で判断する」ことが命を守ります。大切なのは、➊事前に決めた行動基準、➋無理をしない判断、➌情報が揃うまで動かない冷静さです。

人は想定外の状況には対応できません。「会社にいるとき」「通勤中」「商業施設にいるとき」など、それぞれの場面で「揺れたらどうするか」「動くのか、留まるのか」を普段からイメージしておきましょう。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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