情報・連絡編|災害時、何を信じてどう動く?
情報に振り回されないために

  • 公開日:2026.07.24

地震が起きた瞬間、多くの人が反射的にスマホを手に取り、速報やSNSを確認するのではないでしょうか。「震度6、津波の心配なし」といった表示を見て、少し安心する。けれど、その判断は本当に安全なのでしょうか。災害時には情報が一気に流れ込み、その多くは整理されていません。だからこそ大切なのは、情報を見る前に、まず自分の置かれた状況を正しく把握することです。ここでは、災害時に本当に役立つ情報の集め方と、家族とつながるための備えをお伝えします。

スマホを見る前にやるべきこと

発災直後に優先すべきことは、とてもシンプルです。まずは自分や家族の安全を確保。揺れを感じたらその場で「ダンゴムシのポーズ」をとり、命を守るのが基本です。慌てて外に出たり、足元の確認をしないまま逃げると怪我につながります。

次に、家の中の被害状況を確認します。家具が倒れていないか、ガスや水道、電気はどうか。玄関のドアが開くかどうかも必ず確認してください。これは避難経路を確保するためにとても重要です。そのうえで、家の外の様子を自分の目で確認します。

ここまで確認してから、情報収集に移りましょう。

災害時にはラジオが特に役立つ理由

情報収集というとスマホを思い浮かべがちですが、災害時に強い味方になるのがラジオです。停電しても使え、スマホのバッテリーを消耗しないのも大きなメリット。画面を見続ける必要がなく、整理された情報が音声で届くため、内容も理解しやすいのも特徴です。災害時は「目で追う情報」よりも、「耳から入る情報」のほうが冷静な判断につながります。

また、ラジオは語りかけるように情報を届けてくれます。目の前の景色が一変し、状況をうまく理解できないとき、人は想像以上に不安を感じるものです。そんなときに届く人の声は、心を落ち着かせてくれます。私自身も、過去3回の被災時に何度もラジオに助けられました。

さらに、ラジオは地域に密着した情報をリアルタイムで発信してくれる点も強みです。日々の生活の中でラジオに親しんでおくことで、災害時にはより一層心の拠り所になると思います。

ネットは便利。でも万能ではない

もちろん、ネットも重要な情報源です。停電時には、スマホは貴重な通信手段になります。しかし、災害直後はアクセスが集中し、回線が混雑してサイトが開かないことも少なくありません。基地局によっては通信自体が不安定になる場合もあります。

特に発災後6時間ほどは「つながりにくい」ことを前提に行動しましょう。ネットに張りつくよりも、安全の確保とバッテリーの温存を優先する意識が、その後の行動を大きく左右します。

災害前に必ず確認しておきたい「ハザードマップ」

発災時に慌てないためには、平時から正確な情報を把握しておくことが大切です。その基本となるのが、自治体が公表しているハザードマップの確認です。自宅周辺が水害に弱いのか、地盤に不安があるのか、最寄りの避難所はどこかなど、事前に把握しておきましょう。

ただし、避難所は必ずしもすべての災害に対応しているわけではありません。地震・水害・火災など、災害の種類によって適した避難先は異なりますので注意が必要です。

さらに、避難所までの道順を確認しておくことも重要です。できれば防災リュックを背負って実際に歩いてみてください。距離や坂道・階段の有無、そして自分の体力を知ることも大切な備えです。

防災アプリ・地図アプリは使い慣れておく

災害時には、位置情報をもとに危険を知らせてくれる防災アプリや、避難経路を確認できる地図アプリが役立ちます。これらはリアルタイムで状況を把握できる便利なツールですが、ダウンロードしておくだけでは十分とはいえません。

通知設定を済ませたら、実際に操作してみて、どのような情報が届くのか、どの画面で何が確認できるのかを事前に把握しておきましょう。普段から慣れておくことで、緊急時にも迷わず使うことができます。

●おすすめの防災・地図アプリ
Yahoo!防災速報:設定した地域の自治体が発表する防災情報を通知
ウェザーニュース:日々の天気予報から災害関連情報まで確認可能
特務機関NERV防災アプリ:防災気象情報を国内最速レベルで配信
Googleマップ:オフラインマップ機能により通信障害時も閲覧可能

リアルな現地情報はX(旧Twitter)から

災害時に現地の最新状況を知る手段として有効なのが「X」です。自治体や官公庁、消防などの公式アカウントに加え、顔・名前・職業を明記して発信している個人の情報も参考になります。

ただし、情報を共有する際には注意が必要です。日時がはっきりしない情報や、真偽が確認できない投稿はむやみに拡散しないように心がけてください。これは自分と周囲を守る行動でもあります。

●フォローしておきたい公式アカウント
内閣府防災(@CAO_BOUSAI
首相官邸(災害・危機管理情報)(@Kantei_Saigai
総務省消防庁(@FDMA_JAPAN
国土交通省(@MLIT_JAPAN
辻直美/国際災害レスキューナース(@tobecoolnao

連絡手段は事前に使って確認

災害時の連絡手段は一つに頼らず、複数用意しておくことが肝心です。設定を済ませるだけでなく、実際に使ってみることで本当に使えるかどうか確認しておくと安心です。

●緊急時に使いたい代表的な連絡手段
スマホの緊急SOS機能:ボタン操作で事前登録した連絡先に通知できる
災害用伝言ダイヤル171:安否情報を音声で録音・再生できる
災害用伝言板web171:安否情報をテキストで登録・確認できる
LINEグループ:位置情報の共有も可能
公衆電話:設置場所を確認し、小銭やテレホンカードを携帯しておく

EXPERT’S NOTE

家族の安否確認は「171(いない)」で覚えて練習

災害用伝言ダイヤル「171」は、大規模災害時に利用できる安否確認サービスです。毎月1日と15日には体験利用ができるので、「171(いない)」と覚え、家族で練習してみてください。

おすすめしたいのが、少し楽しい練習方法。録音する人は「今日食べたい好物」を伝言に残し、再生した人はそれを夕食に並べる。これだけで、自然と使い方が身につきます。

情報収集も連絡手段も、知っているだけでは十分ではありません。日頃から楽しみながら、無理なく生活に取り入れることが、いざという時にあなたや大切な人を守る力になります。

  • PROFILE

    辻 直美さん
    国際災害レスキューナース

    一般社団法人育母塾 代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援に従事。帰国後は看護師として勤務する中で阪神・淡路大震災を経験し、実家の全壊をきっかけに災害医療の道へ。国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)で救命救急に携わり、レスキューナースとして活動。現在はフリーランスナースとして、国内各地で講演や防災教育を行い、要請があれば被災地支援にも従事。著書に『レスキューナースが教える 最強版 プチプラ防災』(扶桑社刊)など。

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