【ガラスのある風景】 #2 使い⼿の暮らしに寄り添うデザイン
ふだん使っている器を変えてみるだけで、なにげない日々に彩りが生まれることも。職人の手仕事によるガラス製造を行っている「Sghr スガハラ」の器は多彩。使い手に寄り添い、暮らしのシーンをすてきに演出するデザインに迫ります。
Photographs: Yoshiharu Otaki(メイン写真+以下、写真に★印)
ガラスならではの魅力をカタチに
ひと口に手仕事によるガラス製造といっても、製品によってつくり方はさまざまで、必要な道具や技法も異なります。スガハラの製品のデザインを考案するのは職人自身。日々ガラスに触れ、その特性をよく知っているからこそ、ガラスの新たな表情を引き出せます。
デザインする上での唯一の決まりごとは「日常使いできるもの」をつくること。職人の個性と磨き上げてきた技術が製品のカタチに現れ、使い手の暮らしに寄り添います。
流れるようなフォルムでガラスのやわらかさを感じさせる一輪挿し「HEART CURVA」。※オンラインストア限定色
流れるようなフォルムでガラスのやわらかさを感じさせる一輪挿し「HEART CURVA」。※オンラインストア限定色
美しい影のためにデザインされた器
食卓に落ちるシルエットが料理を引き立てるプレート「FLUTTER」。
「FLUTTER(フラッタ)」は透明なガラスならではの影を楽しんでほしいという思いから生まれました。ガラスの塊を水蒸気の力で膨らませる「ピンブロー」という珍しい技法でつくられています。デザインを手がけたのは職人歴25年の松浦健司さん。
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水で濡らした紙を当て、水蒸気の膨張する力でガラスを膨らませる。
「息で膨らませると全体的に同じ厚みになりますが、ピンブローだと底が厚くて口が薄くなります。この特徴を生かした器がつくりたいと思ったんです」と松浦さん。凹凸のある型にはめてからピンブローで膨らませると、厚みのある部分に模様がしっかり残り、影に現れます。
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竿を回転させ、遠心力で口を広げてプレート状にする。
「遠心力で口を広げたときにガラスが伸びていく表情、重力によって生まれる緩やかなラインをそのまま生かし、縁がひらひらした形状をデザインに落とし込みました」。水蒸気・遠心力・重力といった自然の力を利用しているので、一点一点が個性豊かな仕上がりに。有機的なフォルムが魅力的な影を生み出しています。
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竿を傾けて重力で縁に動きをつける。「つくるたびに違う表情に出合えておもしろいですね」
日常使いで楽しむガラスの魅力
《アートのような影模様》
太陽や照明、キャンドルの光を受けて煌めき、テーブルや壁に影を落とすガラスの器。その影には透過したガラスの色や反射した光も含まれていて表情豊か。注いだ飲み物、盛り付けた料理、生けた草花との組み合わせによっても、見え方が変わり、さまざまな表情を楽しめます。
水をそのまま器にしたようなプレート「H2O」。何を盛ろうかと考えるのも楽しい。
水をそのまま器にしたようなプレート「H2O」。何を盛ろうかと考えるのも楽しい。
《手仕事ならではの揺らぎ》
硬質なのにやわらかさや温かみ、優しい印象を感じるのは、手仕事ならではの揺らぎがあるから。一つ一つ職人の手でつくられているので二つとして同じものがなく、「世界に一つだけ」の特別感も。ふだん使いの器として取り入れると、日常をちょっと贅沢にしてくれます。
飲み物が常に入っているような不思議なグラス「DUO」はスガハラの代表作。
飲み物が常に入っているような不思議なグラス「DUO」はスガハラの代表作。
TIPS
温かい料理や飲み物もガラスの器で。
スガハラの製品をはじめ、一般的なソーダガラスの耐熱温度差は約70度。冷蔵庫で冷やしたグラスに沸騰したお湯を注ぐなど、急激な温度変化を与えなければ、温かい料理や飲み物を入れて使えます。室温が低い場合は器をお湯にくぐらせてから使うと安心。料理も冷めにくくなります。
ガラスの器には冷たいものを盛るイメージが強いですが、カレーやパスタといった温かな定番料理を盛り付けてみると新鮮な印象に。透明感のあるガラスはどんな素材とも相性がよく、涼やかな食卓を演出してくれます。自由な発想で器使いの幅を広げましょう。
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菅原工芸硝子株式会社
1932年に創業し、1970年代より自社開発と自社販売を始める。創業以来、職人によるハンドメイドでガラス製造を行っている。千葉県九十九里の本社敷地内には工房のほかに、カフェやファクトリーショップを併設。オンラインでの工房見学(要予約)も好評。
https://www.sugahara.com